むかしむかし、中国の山東省というところに、
許(きょ)という漁師がいました。
許は、とてもお酒がすきで、毎晩川に出かけては、
さかなをとるアミをうちながら、
ゆっくりお酒を飲んでいました。
でも、許のお酒の飲みかたは、少しかわっています。
まず、自分がさかずきで飲んでから、
でも、許のお酒の飲みかたは、少しかわっています。
まず、自分がさかずきで飲んでから、
ほんのちょっと地面にたらします。
そして「まあ、お飲みなさいよ」
と、まるで友だちにすすめるようにいうのです。
これには、わけがありました。
ながいあいだ漁師をやってきた許は、そのあいだに
ずいぶん友だちを川でなくしました。
お酒をたらすのは、その人たちへの
心ばかりのささげものだったのです。
ある夜のことです。
川岸を、一人の若者が通りかかりました。
「いかがです。川を見ながら、一ぱい飲みませんか?」
許は、お酒の相手がほしいと思っていたので、
ある夜のことです。
川岸を、一人の若者が通りかかりました。
「いかがです。川を見ながら、一ぱい飲みませんか?」
許は、お酒の相手がほしいと思っていたので、
若者に声をかけました。
すると若者はうれしそうに、
許の横に腰をおろしました。
その夜、二人はまるで、むかしからの友だちのように
お酒をくみかわしました。
そろそろ夜が明けようとした時
許は、まだ一匹もアミにさかなが
かかっていないことに気がつきました。
「これはこまったな。女房になんていおう」
とガッカリしていると、ふいに若者が消えて
そのかわり許のアミには、ピチピチとたくさんの
さかながかかりました。
「これは!」
許がビックリしていると、また若者があらわれて、
「ほんの、お礼のしるしです」といいました。
許は、ふしぎな若者だなと思いましたが、
何よりもさかながとれたのがうれしくて、
何度も何度もお礼をいいました。
すると若者はわらって、
「いいえ、今までに、ずいぶん
許がビックリしていると、また若者があらわれて、
「ほんの、お礼のしるしです」といいました。
許は、ふしぎな若者だなと思いましたが、
何よりもさかながとれたのがうれしくて、
何度も何度もお礼をいいました。
すると若者はわらって、
「いいえ、今までに、ずいぶん
お酒をごちそうになりましたから」というのです。
「今までにだって? そんなはずはない。
「今までにだって? そんなはずはない。
あなたとお酒を飲んだのは、初めてのはずだが・・・」
許がおどろいていると、若者はかさねていいました。
「それに、これからも友だちとして
「それに、これからも友だちとして
おつきあいさせてもらいたいので」
「おお、それはもちろん。こちらから
おねがいしたいくらいだ。
そうだ、あなたのお名まえは?」
「王六郎(おうろくろう)と、おぼえておいてください」
若者はかるく頭をさげると、
そうだ、あなたのお名まえは?」
「王六郎(おうろくろう)と、おぼえておいてください」
若者はかるく頭をさげると、
足ばやにどこかへいってしまいました。
「ふしぎな若者だな・・・。おおっ、それよりさかなさかな」
許はさっそく、とれたさかなを市場にもっていきました。
さかなはどれも見事なものばかりで、
さかなはどれも見事なものばかりで、
飛ぶように売れてしまいました。
許と若者は、それから毎晩、川で酒をくみかわしました。
半年くらいすぎたある晩、いつものようにやってきた若者は
「いろいろお世話になりましたが、
今日でおわかれしなくてはなりません」
「いろいろお世話になりましたが、
今日でおわかれしなくてはなりません」
「お別れですって? それはまたどうしてです?」
許がたずねると、若者は心を決めたように
まっすぐ許を見ていいました。
「じつは、わたしはこの川の亡霊なのです。
私はお酒がとてもすきで、毎日のように飲んでいました。
そのために、川に転落して死んだのです。
許がたずねると、若者は心を決めたように
まっすぐ許を見ていいました。
「じつは、わたしはこの川の亡霊なのです。
私はお酒がとてもすきで、毎日のように飲んでいました。
そのために、川に転落して死んだのです。
亡霊になってもお酒を飲みたいと思ったので、
あなたが川岸にお酒をたらしてくださったことが、
どんなにうれしかったか。
そのお礼がしたくて、ここへやってきたのです」
「それなのに、どうしてお別れしなくてはならないのですか?
これからもいっしょに飲みましょう」
許がいうと、若者はうれしそうに答えました。
「実は、お酒の失敗が許されて、
もう一度この世に生き返ることになったのです」
「ほう、それはめでたい!」
許がお酒をすすめると、若者はつづけていいました。
「しかし、わたしが生き返るかわりに、
あなたが川岸にお酒をたらしてくださったことが、
どんなにうれしかったか。
そのお礼がしたくて、ここへやってきたのです」
「それなのに、どうしてお別れしなくてはならないのですか?
これからもいっしょに飲みましょう」
許がいうと、若者はうれしそうに答えました。
「実は、お酒の失敗が許されて、
もう一度この世に生き返ることになったのです」
「ほう、それはめでたい!」
許がお酒をすすめると、若者はつづけていいました。
「しかし、わたしが生き返るかわりに、
明日のお昼ごろ、だれかが川におちて死ぬ
ことになっているのです」
次の日、若者のいったことが本当かどうか、
次の日、若者のいったことが本当かどうか、
許は川へいってみました。
するとそこへ、赤ん坊をだいた女の人がやってきて、
あっというまに足をすベらせてしまいました。
赤ん坊は、とっさに岸へなげ出されましたが、
女の人は、グングンと急流に流されていきます。
「こまったぞ! あの人が若者のかわりらしい。
助けてやりたいが、そうすれば若者は、
あっというまに足をすベらせてしまいました。
赤ん坊は、とっさに岸へなげ出されましたが、
女の人は、グングンと急流に流されていきます。
「こまったぞ! あの人が若者のかわりらしい。
助けてやりたいが、そうすれば若者は、
生き返ることができないし」
許がウロウロしていると、川の流れが急にかわって、
女の人は浅瀬にうちあげられました。
その夜、若者は川にやってきました。
その夜、若者は川にやってきました。
「わたしは、女の人をおぼれさせることが
できませんでした。もう、亡霊のままでいることにします」
「そうか。でも、あんたは立派だよ!」
許は、若者をなぐさめてやりました。
ところがある晩、若者がやってきていいました。
許は、若者をなぐさめてやりました。
ところがある晩、若者がやってきていいました。
「許さん、今度こそおわかれです」
「なんだ? また、身がわりがきまったのですか?」
「いいえ。あの女の人を助けたことが神さまの耳に入って、
わたしは遠い町のまもり神になることがきまりました。
生き返ることはできないけれど、生きている人の命をまもる、
とても大切な仕事です。これからまいります。
あなたもお元気で。ご恩はわすれません」
わたしは遠い町のまもり神になることがきまりました。
生き返ることはできないけれど、生きている人の命をまもる、
とても大切な仕事です。これからまいります。
あなたもお元気で。ご恩はわすれません」
それっきり、若者は川にはあらわれませんでした。
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
自分の命を守る。
生きている人の命を守る。
とても大切な仕事。
人によっていろいろな守り方ができるはず。
生まれてきたことの恩返し。
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
自分の命を守る。
生きている人の命を守る。
とても大切な仕事。
人によっていろいろな守り方ができるはず。
生まれてきたことの恩返し。
1 コメント:
この「恩返し」のお話
私の心にとてもストレートに響く逸話でした。いろいろと考えさせられました。
本当に偶然に貴ブログを発見し、出会えました。ありがとうございます@@‘
井上RIN
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