2009年5月16日土曜日

№14 妄想












2009年12月29日 チチハル 

今回もMrxの課題を守れない。
チチハルまで寝台で来てしまった。
宿泊は30元以下を指定されたがそれも無理。どうしても泊まれない。
限界を超えたいが・・・今日は、150元のホテルに泊まったしまった。

自己嫌悪に陥る。

列車は午後4時に丹東を出た。
列車のクラスは、普通と寝台さらにその上がある。

俺は、今回普通の寝台を選んだ。Mrxは必ず一般の人が乗るクラスを指示する。
しかし、22時間、座って・・・無理ダーと思った。
いうとおりできないのは申し訳ない。次は必ず挑戦する。

列車は普通列車なので各駅に停車していく。
とてもゆっくり。ジーゼルだと思うが余り力もない。
丹東駅では、1時間おきに長距離の列車が出発していく。

様々な人がいる。数人を観察してみた。
何を考えているかは分からないが、身なりで一般か寝台か、
つまりお金があるか無いか分かる。少しのお金でも切り詰めて家族のために残す。
おみやげを買って帰るのではないか。

寝台が175元。一般は55元だった。
途中でかなり降りていったが、それでも、12時間以上は座り続けている。
しかも、3人掛けで対面だ。体を動かす余裕はない。

みな、文句も言わないで黙々と座り続けるのだ。
自分のためだったら寝台に乗るだろう。しかし、我慢して一般に乗る。
若い人でも苦痛だろうから年寄りにはこたえると思う。

誰もが、家族のため、他の人間のために自分の身を犠牲にしている。
そして、それを犠牲とは思っていない。

家族が喜べばそれがうれしい。そう考えているのではないか。
俺にはその思いがかけている。どうしても、自分を優先する。
家族を優先しない。

他の人を優先するかといえばその記憶も無い。
俺は他の人が働いて稼いだお金で贅沢をしている。
社員が給料30万でやっていても、俺の給料はその100倍。

その金を何に使っていたのか。とても言えない。
どう考えても間違っている。
みんなが働いて稼いだお金を俺が好き勝手に使って良いわけがない。
自分のアイデアで会社は稼いだ。そういう思いがあった。

俺がいなければ会社は成り立たない。そんな事は当たり前の話だった。
社長なのだから誰よりも働き、誰よりもアイデアを出し稼ぐ。その金を有効に使かう。

口では税金を沢山払い社会貢献をするといっていたが、
実際行っているが、気持ちの上ではその気はない。
みんなの稼いだお金を好き勝手に使っていたのだ。

ここに来て、お金の価値、自分の思っている価値と
人の考える価値は違うように思う。

俺はセレブになりたかった。
良い車に乗り、高級マンションに住み、ブランド品の服をきて、
最高のレストランで食事をする。

その世界を極めたいと思った。
しかし、いつの間にか事業はうまくいかなくなり、儲からなくなった。
それでも、自分の給料はかなりあったので使った。

一度見栄を張ったものは、なかなか元に戻れない。
飲みに行けば、割り勘はかっこわるいと自分が全部払った。

今日も列車でまたやってしまった。
女性の車掌さんにチチハルでおりるとき、残っていた小銭を差し出した。
どうぞ。というきもちだ。
しかし、車掌は笑って受け取らなかった。

旅の途中でしょう。大切にしなさい。そう言っていた。
笑顔で俺を送り出してくれた。

どうして俺はこういう事をやってしまうのか、自己嫌悪に陥る。
もし自分だったらうれしいか。うれしくない。施しは受けない。
バカにするなと思うだろう。相手の気持ちを理解できない。

自分も気持ちを優先してしまう。俺は大きな勘違いをしていた。
全ての人を下に見ていた気がする。―どうしてそうなのか。

お金でおごったり、お金をばらまく人間は必ず失敗する。
それを俺はよく知っているはずだ。
なのに、自分がそれをしてしまう。まず、これをやめよう。

どんな人にもプライドはある。相手の気持ちを考えよう。
下に見るのも、かわいそうという気持ちも棄てよう。
人間に価値を付けるのは恥ずかしいことなのだ。

セレブの世界に入りいつの間にか、一番嫌らしい人間になっていた

悲しい。

どんな人間にも生活があり家族を守っている。必死に働いている。
ただ働き続ける。自分の生活をよくしたいと思うのではない。

他の人間を幸せにしたいと思って働いているのだ。そういう人間達と付き合おう。

お金を沢山払い、高価なワインを飲み、バーで騒ぐ。
その場は楽しい。良い気持ちにもなる。ワインの奥を知ることもできる。

しかし、そんなものは毎日やる必要はないし、尊敬できる人間とやればいい。
きれいで、ワインに詳しくて、上流の世界を知っている。
そういう人間にも尊敬できる人はいるかも知れない。

しかし、俺の周りに居たか。いない。
俺は損得で動き、お金にものを言わせ、本当に文化的な事を学ぼうとしなかった。

表面的な人間だからだ。だから、同じような人間が集まる。
もう、その世界はきっぱりとやめよう。

好きな人と安いくてもおいしい店を探す。楽しい会話を楽しむ。
人生について語る。俺の旅を語る。俺の人生を語り相手の人生を知る。

深い人間なら、それが一番素晴らしい話のはずだ。
生きてきた人生以上に素晴らしい話などあるわけがない。

俺は自分を語る。その話が興味深く、ためになり、誰かの手助けになる。
そんな人間を目指したい。

中国の人を見ていると、たまに着飾った人がいる。
今回の列車にもいた。その人達を尊敬できたか。できない。

大きな荷物を持ち、子供の手を引き、笑顔で話しかける。
そんな家族は見ていてうれしくなる。こっちが暖かい気持ちになる。

なぜ、俺は、大切な家族を大切にできなかったのか。
もっと、もっと色々な人間を見て考えてみたい。

列車は22時間乗った。時間がたつにつれ本当にこの列車で大丈夫か不安が広がる。
12時間以上走った。あたりはみな雪の平原だ。
駅がある程度の距離で存在するのでとまる。
とまる度に、ここではないかと不安になる。眠れない。

心臓が締め付けられる。もし、ここでおろされたら、いったい俺はどうなるのか。
言葉は分からない。所持金は少ない。ご飯はどうしよう。
ドンドン不安になる。

最終地点のチチハルに近づく。本当に大丈夫か。
まったく違うどこかに行かないか。チチハルにホテルは本当にあるのか。
心臓がきりきりと痛い。水を飲む。

そわそわして、バックのなか、ズボンのポケットを何度もまさぐる。
前の中国人の目が怪しい。トイレにもいけない。
いくときはバックに布団をかけていった。トイレに入る。
大便ができない・・・いやだ。我慢する。

大便がきになり中国のご飯が食べられない。
当たったら悲惨だ。1分おきにトイレに行くのは嫌だ。
我慢してまたパンを食べる。

青汁の粒を持ってきてあったので、それで、栄養を補給している。
中国のご飯になれる事はできるのか。そう言えば、色々聞くことになれてきた。

といっても、言葉には出ないで、紙に書いて見せている。
返事が中国語なのでまた分からないが、安いホテルはないか?
いくらかかりますか?ここにはどう行けばいいですか?
など、見せて聞くようにしている。

しかし、とにかく寒いのですぐに限界になる。ああ、分からない。

今日はあきらめて明日からまた頑張って聞こう・・・
とすぐにあきらめてしまう。

仕事では粘ることができるのに、少し不安になるとすぐにお金に頼ろうとする。
何とかならなか。

22時間色々考えた。逆に、考え無くなって来たことがある。
それは、女の事だ。あれをして、これをして、また、こういうHしたいな。
など、最初の頃は考えていたのだが、どうしても、考えが進まなくなってきた。

人の観察、自分の過去などをふりかえろうとすると、
いつまでも振り返ることができる。これはこうだな。
その場合こうしたらどうなっていたかな?すぐに忘れてしまうのだが、
振り返り、思いだし、一人で笑ったり寒気を覚えたりしている。

しかし、こと女の事になると続かない。
これはどうしたことか?自然に考えなくなればいいのだが。

メールが誰からも来なくなった。

お正月休みということもあるがとても静かだ。と同時に寂しい。
どうしてだれも心配してくれないのか。
俺の旅よりも正月休みが大事か。

孤独の旅と言ってあるので、
みな気を遣ってメールをよこさないのだと思うが、やはり連絡がないのは寂しい。

今日の一番の気づきは、将来のことを考えない、ということだ。

列車を待つ間、列車のなか、
列車から降りる人達をみていて今を一生懸命生きているように見えた。
未来に絶望するわけでもなく頑張って働いて、
1日が何事も無く終わる。家族が待っている暖かい家に早く帰る。

頑張ってくれてありがとう。
早く暖まって。そう声をかけてくれる家族がいるだけで幸せだ。
人々を見てそう思った。

俺は将来どうしよう。理想の生活は?来年はどうやって稼ごう。
その次は、そして、死ぬときの事ばかりを考えていた。
幸せに死にたい。笑って死にたい。
自分はそんな生活をしていないのになんで、そんな死に方ができるか。

将来をあれこれ望んでどうなる

今。どうやって切符を買うか、トイレをどうするか、どこで降りるか。
列車を降りた後の事を考えても仕方がない。
そこに、ホテルは無いかも知れない。
列車がなにかあって着かないかも知れない。駅で逮捕されるかも知れない。

何がおきてもおかしくないし、何もおきないかも知れない。
わからない未来をあれこれ想像しても仕方がない。

今は、与えられた課題をこなす。次に進む。思考の壁を破る。
今を正直に生きる。それが俺に与えられたことなのだ。それをやり遂げよう。

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